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誕生日 10
「タヌキ君!タヌキ君!」
タヌキは呼ばれて目を覚ましました。
朝でした。
「おはよう、タヌキ君!」
玄関で、ウサギとネズミとリスとアナグマが呼んでいました。
「どうしたんだい?こんな寒い朝早くから」
「なにを!なにを!今日は君の誕生日でないかね!」
みんなは、びっくりしているタヌキを家から引っぱり出しました。外はからりと晴れていましたが、昨晩の雪が積もって、朝日でまぶしく輝いていました。
「え?ど、どうするの?まだ上着も着ていないよ」
「大丈夫でしょ、タヌキ君はいい毛皮があるんだから!」
実際のところ、タヌキはもこもこの毛皮があるので、寒くてもわりかし平気でした。上着を着るのは、おしゃれのつもりなのでした。
みんなはタヌキを押したり引っぱったりして、原っぱまでつれていきました。
原っぱは、雪でまっ白になっていました。
「せえの、」「タヌキ君、お誕生日、おめでとう!」
「あ、ありがとう」
タヌキは自分の誕生日を祝ってもらうのが初めてだったので、どんな顔をすればいいのかわからず、あわててなんだか変な顔をしてみました。
つづく
誕生日 9
やがて木の葉も落ち、冬がやってきました。毎日冷たい風が吹き、動物たちは家にこもって、外を出歩かなくなりました。くじら山全体が、なんだかさびしい空気につつまれていました。
「ふうう~、いやだなあ。まあ、冬ってのはこういうものだよなあ」
タヌキも家にこもったきり、出歩かなくなっていました。
「そういえば、ウサギさんのお誕生会はたのしかったなあ。明日は一年に一度の、僕の誕生日なのに、誰も気がつかないんだ」
タヌキは窓から外をながめました。
うす暗い空から、雪がさびしくちらついてきました。
つづく
誕生日 8
踊りつかれると、みんなは原っぱでお昼寝をしました。
あたたかい日差しの中でのお昼寝は、とても気持ちのいいものでした。
さわやかに風が吹くと、緑色のにおいがしました。
タヌキはいつのまにか、すっかりいい気分になっていました。
つづく
誕生日 7
それからみんなは、広い原っぱのまん中で踊りました。
ネズミが、とてつもなくいい声で歌ってくれました。
「へえい ほおう へえい ほおう~!なあ、タヌキ君。ちょいとばかし、その太鼓をたたいてくれないかね?」
ネズミに言われて、タヌキはおなかの太鼓をぽんぽこぽんぽこたたきました。するとそれにあわせて、みんなのとんだりはねたりする動きがどんどん軽やかになっていき、そのうち踊りながらきゃあきゃあ笑いだしました。
「たのしいな!」
ウサギが、息を切らせて叫びました。
「やっぱり、タヌキ君がいると、最高ね!」
リスがくるりとまわって笑いました。
「そ、そう?」
タヌキはちょっとはにかんで、ぽんぽこぽんぽこたたきました。
つづく
誕生日 6
どうしようもないのでタヌキは、恥ずかしさで顔をまっ赤にしながらタンポポの花をさしだしました。それから下をむいて、あやまろうとしました。
ところが、それを見たウサギは耳をぴんと立てて叫びました。
「まあ!まあ!タンポポだわ!わたしの一番の大好物よ!タヌキ君ありがとう!ものすごくうれしいわ!」
そしてタヌキの手からタンポポを受け取ると、もしゃもしゃ食べてしまいました。
タヌキはびっくりして顔をあげました。
「おお、さすがはタヌキ君だ。すばらしい贈り物を選んできたね」
みんなもすっかり感心しています。
「あ、いや、なんていうか、どういたしまして」
タヌキはまた下をむいて、もじもじしました。
つづく
誕生日 5
「みんないい贈り物をえらんできたね。あとはタヌキ君、君はいったいどんな贈り物をもってきたんだい?」
キツネが言うと、みんながタヌキを見ました。
タヌキは、雑草をちぎって持ってきた自分が本当に情けなくなりました。みんなに注目されて、ますますタンポポを出せなくなってしまいました。その場から逃げ出したくなりました。
ウサギは、わくわくした目でタヌキの顔をじっと見ています。
タヌキの眉は、ものすごく八の形になりました。
「どうしたというのかね、タヌキ君」
ネズミがいぶかしそうに言いました。
つづく
誕生日 4
それからみんなはウサギに、それぞれ贈り物をわたしました。
キツネの贈り物は、自分で焼いてきた古代パンでした。
「キツネ君ありがとう!わたし、このかたいパン大好きなの」
ウサギはおおよろこびでした。
ネズミは、つんだばかりのおいしそうなキイチゴの実をあげました。
「ネズミさんありがとう!わたし、キイチゴも大好き」
「えへん、どういたしまして」
リスの贈り物は、シロツメクサの花飾りでした。それはリスの器用な手で上手につくられており、とてもかわいらしいものでした。
「ありがとうリスさん!似合うかしら?」
ウサギはそれを頭にのっけてにこにこしました。
「ええ、とてもよく似合ってるわ」
アナグマが持ってきたのは、見事に咲いた大きなユリの花でした。
「わあ、アナグマさんありがとう!まるでラッパみたい。ぱほー!って鳴りそうね」
それはあまりにも立派なユリだったので、タヌキは自分の持ってきたちいさいタンポポが恥ずかしくなってきました。それに、ユリの花はとてもよい香りがしていました。
つづく
誕生日 3
タヌキが原っぱにつくと、もうキツネとアナグマとリスとネズミが来ていて、ウサギをかこんでいました。
「やあ、タヌキ君も来たぞ、さあ、はじめよう!」
そこでみんなは声をそろえて「お誕生日おめでとうの歌」を歌いました。
ウサギはうれしそうに、ずっとにこにこしていました。
つづく
誕生日 2
さて、くじら山にウサギの誕生日がやってきました。ウサギは、春の終わりくらいで夏の始まりくらいという、いちばんすてきな季節の生まれでした。
ウサギのお誕生会のお知らせは、もちろんタヌキにも届いていました。
「今日はウサギさんの誕生日かあ。いいお天気だな。ああ、それにしても、なんで僕だけが冬生まれなんだろう。でも、こればかりはどうにもならないことだからなあ」
タヌキはあまり行きたくありませんでしたが、欠席していやなタヌキだと思われるのがくやしかったので、お誕生会をやっている原っぱへと向かいました。その途中で、贈り物をなにも用意していなかったことに気がつきましたが、面倒くさかったので、そこらあたりに生えていたタンポポの花を一本ちぎって、「これでいいや」と持っていきました。
つづく
誕生日 1
タヌキは、誕生日というものが台風の日よりも嫌いでした。
くじら山の動物たちは、たいていみんな春か夏の生まれでした。どんなに遅くても秋でした。
ところがどういうわけか、タヌキだけが冬生まれなのでした。
他のみんなのお誕生会は、あたたかくて、花が咲いていて、おいしいものもたくさんあって、いつも明るいのでした。なのにタヌキの誕生日といえば、寒くて暗くて食べるものも少なくて、おまけに冬眠している動物もいましたから、今まで誰にも祝ってもらったことがありませんでした。
それでタヌキは、今度だれだれのお誕生会がある、というような話を聞くと、「ちぇっ」とか言って、ひとりですねてみたりするのでした。
つづく
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